専門医療・TOPICS
心臓血管外科は、その名と通り血管と心臓の専門家です。脚の血管がボコボコと浮き出てしまう『下肢静脈瘤』の日帰り治療から、切らない大動脈瘤治療、弁膜症、失神、心不全など、「心臓」「血管」に生じる様々な病気の診断と治療を行っています。
- 普通に外来受診してもいいのか不安・・・
- 心臓血管外科は手術を専門にしているんじゃないの?
- 何だか物々しい名前だし受診しにくい気がする・・・
- これから手術する人・手術をした人しか受診できないんじゃ?
心臓血管外科をそんな風に感じている方は意外と多いようですが、心臓や血管という大切な臓器を守るための診療科が『受診し難い/敷居が高い』などという事はあってはいけませんし、実施そんな事はありません。
心臓や血管に関する気になる症状が有る方、他院で心臓血管外科を紹介された方、健康診断で受診を勧められた方はお気軽にご受診下さい。心臓血管外科の受診が、皆さんの健康と日常を守る大きな一歩になるよう、スタッフ一同努めて参ります。
【初診の方・紹介状をお持ちの方】
既に診察券をお持ちの方で、他院からの紹介状が無い方は1階に設置されている『再来機』でお手続き頂きます。診療科の選択画面で心臓血管外科の受診を選択して下さい。
初めて当院を受診される方、他院からの紹介状をお持ちの方は1階ロビーの『総合受付窓口』にお越し頂き、所定の手続きを行った上で心臓血管外科の川谷医師の外来をご受診下さい。
【診察券のみお持ちの方】
1階の再来機でお手続き下さい。
心臓血管外科で扱う主な疾患
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
心臓に血液を送る冠動脈という血管が動脈硬化などによって狭くなる、もしくは塞がってしまう病気を総称して虚血性心疾患といいます。代表的な症状としては。胸に痛みや締め付けられるような感覚、圧迫感などを感じるというものが挙げられますが、気付かないまま進行することもあります。
特に心臓に栄養を送る血管が閉塞してしまう「心筋梗塞」には一刻も早い治療が必要で、手首や鼠径部からカテーテルという細い管を挿入して閉塞した血管を治療する心臓カテーテルや、手術によって閉塞した血管を迂回するように新しい血管を繋ぐ「冠動脈バイパス術」による治療を行います。軽症であれば飲み薬による治療と生活習慣病に対する治療が有効とされています。
弁膜症
心臓には効率よく、力強い血流を全身に送り出すために血液の流れを整える「弁」があります。この弁が固くなって上手く動かずに流れが妨げられる「狭窄症」や、弁がずれてうまく閉じない「逆流症」「閉鎖不全症」などを引き起こした状態を「弁膜症」といいます。 初期の弁膜症は自覚症状が少ない事が多く、病状の進行と共に歩行時の息切れ、胸の痛み、胸がしめつけられるような感じ、胸が重くるしい感じ、足のむくみなどの症状が現れます。
心臓の出口にある大動脈弁の狭窄症は重症化する突然死のリスクが高い事が知られています。軽症の間は定期的な受診で経過を観察しながら、状態に合わせてお薬による治療を行いますが、心臓の負担が大きくなったら手術による治療を検討します。
手術には人工心肺という生命維持装置を使用して壊れてしまった弁を修復する「弁形成術」、壊れてしまった弁を人工弁に置き換える「弁置換術」、人工心肺を使用せずにカテーテルで人工弁を体内に留置するTAVI(タビ)などの治療方法があり、患者様の状態に合った治療を行います。
大動脈瘤・大動脈解離
大動脈には非常に圧の高い血液が常に流れています。そんな大動脈が動脈硬化などで弱くなってしまうと、その部分が血液の圧に負けて膨らんだり、大動脈の内側が裂けたりしてしまいます。前者のような状態になることを「大動脈瘤」、後者を「大動脈解離」と言います。
これらの病気が放置されると、最終的には大動脈が破れて突然死したり、重要な臓器に血液が流れなくなって命に危険が及ぶ場合もあります。大動脈瘤は重症であっても症状が出ない事が殆どですが、大動脈解離になるとは背中や胸の激痛を伴って発症する事が多いという特徴があります。
大動脈瘤が小さいうちは飲み薬で血圧を厳しく管理しますが、破裂の危険性が高いとされる大きさに膨らんでしまった場合は手術が必要です。
大動脈瘤や大動脈解離の手術では、弱くなった血管を人工血管付きのステント(ステントグラフトと言います)によって、血管の内側から補強する「ステントグラフト内挿術(EVER/TEVER)」や、患部の血管を外科的に切除して人工の血管に繋ぎ替える「人工血管置換術」などの治療を行います。
末梢血管疾患(慢性閉塞性動脈硬化症・大腿動脈瘤など)
心臓から流れてきた血液の「最も下流」に当たるのが足の血管です。動脈硬化により、大動脈や大動脈から足に繋がる血管や、足の中の血管が狭くなってしまい、足に十分な血液が供給されなくなる病気を「慢性閉塞性動脈硬化症」と言います。慢性閉塞性動脈硬化症になると、歩行時に足に重いような痛みが徐々に出て歩けなくなってしまう「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という症状が現れます。
飲み薬と生活習慣病の管理、歩行を中心としたリハビリを中心とした治療を行いますが、これらの治療で症状の改善が不十分な場合は、カテーテルによって狭くなった足の血管を広げる治療や、狭くなった血管を人工血管で跨ぐようにバイパスする手術を行います。
この病気になる患者様は「脳梗塞」や「心筋梗塞」などの命に係わる血管の病気を引き起こしやすいため、外来通院でそれらの原因となる病気の治療も併せて行う必要があります。
失神外来<短時間の意識消失(失神/気絶)を繰り返す方の検査・治療>
心臓血管外科では短時間の意識消失(失神/気絶)を繰り返す方の検査と治療を行う『失神外来』を行っています。
『失神の外来』と聞くと、映画やマンガ・テレビドラマなどで描かれる派手な演出を連想して「失神や気絶の外来!?いったい何をするの!?」と驚かれるかもしれませんが、実は短時間の意識消失(失神/気絶)を繰り返す方は意外と多く、特段珍しいものではありません。
ここでは失神外来で扱う疾患や検査・治療について解説しますので、ご自身やご家族に思い当たる症状がある方は参考にして頂ければ幸いです。
失神とは?
血液は、肺から取り込んだ酸素を体中に届ける重要な役割を担っています。血圧の低下等で血液の循環が上手くいかなくなると、脳に十分な量の血液が行き渡らなくなり、脳が酸素不足になって一時的に意識を消失する『失神』を引き起こすことがあります。多くの場合、意識の消失は一過性で、通常は数分程度で自然に回復します。とはいえ、突然意識を失うため、転倒して頭を強打するなどの外傷を負う可能性もありますし、運転中や入浴中の失神は生命に関わる重大な事故を引き起こすこともあり、非常に危険です。
失神の原因は『心原性失神』『起立性低血圧』『神経調節性失神』の3つに分類されますが、中でも心原性失神には要注意。心原性失神は心臓の拍動(心臓が拡張と収縮を繰り返してポンプのように血液を繰り出すこと)が乱れる『不整脈』や、『弁膜症』『急性心筋梗塞』『肥大型心筋症』などの心臓の器質的疾患が原因の失神です。これらの心疾患は命に関わる場合があるため、速やかに検査で状態を明らかにし、治療を行う必要があります。
検査と治療
失神外来では、心電図検査、採血検査、エコー検査、CT検査などでで失神の原因特定を進めます。また、必要に応じてICM(植込み型心臓モニタ)という装置を体内に留置し、心電図を継続的に見守って、失神の原因を突き止めます。
ICM(植込み型心臓モニタ)とは
ICMは小さなスティック状の医療機器で、失神の原因が心臓の病気か、それ以外かを診断するために役立ちます。植込みの際は胸の皮膚を1センチほど切開し、機器を皮膚の下に挿入(植込み)。手術時間は概ね30分程度と短く、植込み後は最長3年間、24時間絶えずモニタリングを継続し、不整脈や失神した際の心電図を記録します。
血管の専門家「心臓血管外科」が行う下肢静脈瘤の治療
下肢静脈瘤治療は川谷医師が担当しております。治療をご希望の方は川谷医師の外来をご受診下さい。
担当診療科 |
受付時間 |
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川谷洋平 心臓血管外科部長 | 毎週月曜日 8:00~11:30 / 13:00~15:30 毎週金曜日 13:00~15:30 |
足の血管がコブに・・・下肢静脈瘤とはどんな病気?
下肢静脈瘤は脚の静脈が不調をきたし、ボコボコとコブのように膨らんでしまう病気です。
静脈の中には静脈弁という『血液の逆流を防ぐ弁』が備わっています。この弁が壊れると血液が逆流して血管内に溜まり、溜まった血液が徐々に静脈を押し広げるため、結果的に静脈太く曲がりくねってボコボコした静脈、つまり静脈瘤になってしまいます。因みに、下肢静脈瘤は皮膚の下を流れる表在静脈にでき、体内の奥にある深部静脈にはできません。
下肢静脈瘤の代表的な症状は血管がボコボコと膨らむ事ですが、それ以外にもふくらはぎのダルさ、脚のむくみ、こむら返り(つる)、湿疹、色素沈着、潰瘍などの症状がみられる事もあります。いずれも急激に悪化したり、生命に危機を及ぼしたりする事はありませんが、進行性の疾患であるため自然治癒する事はありません。また、見た目を気にした生活にストレスを感じたり、慢性的なダルさ・むくみが生活の質を下げる場合もありますので、見た目もそうですが、気になる点があれば一度受診する事をお勧めします。
下肢静脈瘤の治療
患者さんと身体の状態や意向にフィットした下肢静脈瘤治療を行うために、問題のある血管を引き抜く『ストリッピング手術』、ラジオ波(高周波)で血管を焼いて塞ぐ『血管内焼灼術』、医療用接着剤で血管を塞ぐ『血管内塞栓術(グルー治療/血管内接着剤治療)』、静脈瘤に薬を注射して固める『硬化療法』、手術や薬を使用せずに改善を図る『保存的治療』など、一般的に下肢静脈瘤治療として行われる治療は全て対応しています。
治療については、患者さんの生活サイクルや希望、そして体の状態を加味して患者さんと相談しながら方針を決定しています。気になる事、疑問、希望を遠慮なくお伝え下さい。
医療用接着剤による血管内塞栓術(グルー治療/血管内接着剤治療)
グルー治療(血管内塞栓術)は2019年12月に保険適用となった治療方法です。問題のある静脈に医療用接着剤を注入して血管自体を塞ぐため、熱によって血管を塞ぐラジオ波の血管内焼灼術にのように周辺組織への影響や痛みが少ないこと、問題のある静脈へのTLA麻酔(局所麻酔/注射で行う)が不要であるため、治療に伴う身体的負担が軽減されます。また、治療当日からの歩行やシャワー利用は勿論、弾性ストッキングを着用して行う『圧迫療法』も不要です。ただし、医療用接着剤に対するアレルギーがある方などには別の治療をお勧めする場合もあります。
①カテーテルを問題のある静脈に挿入します。
②血管内に接着剤を注入しながら血管を圧迫して塞いでいきます。
③問題のある血管が接着剤でふさがれました。
④カテーテルを抜き、絆創膏を貼って治療終了となります。
ラジオ波(高周波)による血管内焼灼術
平成26年から健康保険が適応されたラジオ波(高周波)による血管内焼灼術(けっかんないしょうしゃくじゅつ)。ラジオ波(高周波)による血管内焼灼術では、高周波を発生させる細い管を膝の内側から静脈瘤まで挿入し、静脈内で高周波の熱を発生させる事で血管壁を閉塞させることで静脈瘤を治療します。
治療に伴う切開などが無いこと、局所麻酔で治療を行うこと、治療に要する時間が15~20分程度で済むこと、日帰り手術が可能であることから、治療に伴う日常生活への影響も少ないという特徴があります。
ストリッピング手術
ストリッピング手術は、昔から下肢静脈瘤の治療で広く使われてきた歴史ある治療方法です。
膝下と鼠径部を数センチ程切開し、そこからストリッピングワイヤーという針金を挿入して傷んで血液が逆流している静脈自体を取り除くため、再発するリスクが低いという特徴があります。血管を取り除くと聞くと不安に思う方もおられるかもしれませんが、むしろ問題のある静脈を抜くことによって、下肢の血液の流れは本来の流れに戻ります。
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