近著紹介
進行性核上性麻痺:治療戦略と疾患特異的評価尺度
- 湯浅龍彦
鎌ケ谷総合病院千葉神経難病医療センター・センター長 難病脳内科 - 濱田恭子
新さっぽろ脳神経外科病院神経内科
進行性核上性麻痺progressive supranuclear palsy (PSP)は、姿勢反射障害、歩行障害、核上性眼球運動障害、前頭葉性認知機能障害などを来し、臨床的にはパーキンソン症候群 の一画を占める神経変性疾患である。
PSPは希少疾患である。薬剤治験や新しい治療法を開発するに当たっては、症例の蓄積が極めて重要であり、診断精度の高い症例の蓄積が大きな課題である。PSPの治療の現状は極めて厳しい。しかし、今後治療研究を推進して行く道筋としては、疫学研究、病理研究、臨床研究の体制が整備されなければならず、そうして始めて危険因子の抽出、疾患の根底にある分子病態の解明、早期診断技術の開発などがなされる。その上で対症療法であれ、根治療法であれ、治療研究が推進される。治験には薬剤開発のみならず、再生医療、リハビリテーション技術、非薬物療法、補完医療、看護・介護技術の改良、社会的支援体制の整備などが含まれる。そして、治療効果や介入技術の成果を判定・評価する為にも機能尺度が整備されていなければならない。そこで本稿では、PSPの臨床、治療戦略、そしてPSPに関連した機能評価尺度、特に最近米国で開発されたPSP評価尺度(PSPRS)(Golbeら)について解説した。またその日本語版PSPRS-JをGolbe博士の監修を経て作成したのでここに紹介する(神経内科73(6)2010)。
参考資料
- 日本PSP患者会「のぞみの会」
- 「進行性核上性麻痺 診断とケアマニュアル」(難病情報センターホームページ)
- 「進行性核上性麻痺機能尺度日本語版(PSPRS-J)(湯浅・濱田版ver.1-1)」本ホームページ