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認定看護ニュース19号 摂食嚥下のメカニズム

2024.12.04

始めに、嚥下と誤嚥という言葉を知ろう

嚥下

嚥下とは食べ物を飲み込む動作を指しますが、この動作は絶妙な喉の動きがあり、食べ物が通る直前に喉頭蓋という蓋が倒れて、その下の気管に蓋をする事で、食物を食道に導きます。

この嚥下の動きは脳がコントロールしており、わずか1秒以下の反射運動です。

誤嚥

空気の通り道と、食べ物との通り道は交叉します。気管は呼吸している間は常に開いていますが、飲み込む一瞬だけ、蓋をして閉じることができます。

しかしこの蓋が閉じるタイミングがずれると気管に誤って食べ物が侵入してしまいます。これを誤嚥といいます。

次に摂食嚥下のプロセスを知ろう

第1期 認知(先行)期

食べ物を口に取り込む前の過程を指し、この時期に目(視覚)、手(触覚)、香り(嗅覚)などで食べ物を認知することから認知期とも呼ばれている。

第2期 準備期

食べ物を咽頭に送る動きに至るまでの処理過程を準備期と言う。食べ物を取り込む捕食の動きと、それに続く取り込まれた食べ物を処理して食塊を形成するまでの咀嚼の動きが、この時期の特徴的な動きです。

第3期 口腔期

加工処理された食べ物を嚥下するため食塊形成の動きと、咽頭へ送り込む動きの二つの動きがある。口が閉鎖された状態で舌を口蓋に押し付けることによって連続してなされる動きである。

第4期 咽頭期

  1. 口が閉じる
  2. 鼻咽腔が閉じる。(舌口蓋閉鎖もある。)
  3. 喉頭が閉じる

 

この3つが機能して咽頭圧が高まり、食道が開く。

3か所が閉じたことで圧力が生まれ食道に押し込まれる。

第5期 食道期

食塊は咽頭収縮に続き、食道の蠕動運動で胃に運ばれます。

 

どうでしたか?このプロセスは嚥下の5期分類といい、プロセスを理解することで食事の際に起こる異常を見抜くことが出来るのです。

難しい用語もあったかと思いますが、少しずつ知識を深めていきましょう。

 

これをもとに食事場面での観察のポイント

ご自分で食べる方も、食事介助をされる方も是非活用しましょう!

①認知(先行)期

  1. 食物の認知・食事への関心、意欲
  2. 口への運搬
  3. 口での取り込み
  4. 一口量や食べるペース

認知症や、精神疾患をお持ちの場合は、食べる意欲がわかない、違うことに意識が向いているなど食事に集中できないタイミングがあります。食べるタイミングや、匂い、見た目を工夫してみるのがポイントです!!

②準備期

  1. 咀嚼
  2. 食塊形成

食べ物を噛んで、唾液と混ぜ合わせる工程が必要です。

歯のかみ合わせが悪い、義歯がない。などの状況だと、食べ物をつぶして飲み込みやすい形状に出来ていない場合があります。

しっかり噛んですりつぶせているか確認しましょう。

③ 口腔期

 

  1.  咽頭への送り込み

もぐもぐとしているときに、むせる。なんだか口に食べ物が残る。と言ったときにはこの部分で問題が起きているかも。食べ物の形状・姿勢を変えることで解決する場合もあります。

④ 咽頭期

  1. 喉頭挙上
  2. むせ

飲み込んだ一瞬の動作を言います。いわゆる嚥下のタイミングです。

筋力の低下や脳血管疾患、神経難病などによりこの動作が、正常に比べると弱い、遅いなどの問題が出たりします。

しっかりと力強く飲み込めているか、むせてゴホゴホしていないかを観察します。

⑤ 食道期

  1. 胃食道逆流

胃内容物が、何かの拍子で食道に逆流することがあります。

胃酸を含んだ食残が、誤って気管に入り、肺炎となることがあります。

そういったことが起こらないように食べた後はすぐに姿勢を下げないようにしましょう。

元々、そのような体質の方、食道や胃の手術をされている方などは注意が必要です。

食べた後30分程度は体を起こしておくようにしましょう。

嚥下障害の評価

自分は大丈夫!?過信してはダメ
自覚症状がなくても嚥下機能は徐々に低下している?

皆さんは、普段食事をされるときに以下の症状はありませんか。

ここ2~3年でこんな症状があったら注意が必要です。

特に、Aが一つでもあれば摂食嚥下障害ありと言われています。

Bも一つでもあれば、摂食嚥下障害の疑いありです。

今の日本は高齢化が進み、こういった問題を抱えた高齢者が増えているのが現状です。

まずは、このことに興味を持ちご自身のリスクを把握することが重要です。

ご自身/ご家族の状態をチェックしてみましょう!

1.肺炎と診断されたことがありますか?

A.繰り返す B.一度だけ C.なし

 

2.やせてきましたか?

A.明らかに B.わずかに C.なし

 

3.物が飲み込みにくいと感じることがありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

4.食事中にむせることがありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

5.お茶を飲むときにむせることがありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

6.食事中や食後、それ以外の時にものどがゴロゴロ (痰がからんだ感じ)することがありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

7.のどに食べ物が残る感じがすることがありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

8.食べるのが遅くなりましたか?

A.たいへん B.わずかに C.なし

 

9.硬いものが食べにくくなりましたか?

A.たいへん B.わずかに C.なし

 

10.口から食べ物がこぼれることがありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

11.口の中に食べ物が残ることがありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

12.食物や酸っぱい液が胃からのどに戻ってくることが ありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

13.胸に食べ物が残ったり、つまった感じがすることが ありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

14.夜、咳で眠れなかったり目覚めることがありますか?

A.しばしば B.ときどき C.なし

 

15.声がかすれてきましたか? (がらがら声、かすれ声など)

A.たいへん B.わずかに C.なし

 

ひとつでもAの回答があれば嚥下障害と考えられるため、専門家に相談すべきである。

(出典:大熊るり,他: 摂食・嚥下障害スクリーニングのための質問紙の開発. 日摂食嚥下リハ会誌 6(1): 3-8, 2002)

 

いかがでしたか?

まずは、ご自身の食事の注意点を知ることで健康の維持につながると思います。

何らかの問題があり、不安を抱えている方がいましたら、当院の口腔外科を受診しましょう。