摂食とは、食べ物を口に運び、口腔内で飲み込みやすい食塊を形成する事。
嚥下とは、その食塊を適切に食道に運ぶことを指します。
食べる動作が適切に行われないことを摂食・嚥下障害と言います。嚥下障害は様々な疾患に伴って生じる症候群です。最も多い原因は脳血管疾患です。高齢者では、麻痺などの明らかな症状がなくても脳には病変が認められる事が多く、無症候性の脳血管障害と呼ばれ、このような時に他の病気で全身状態が悪化すると、嚥下障害が顕在化する事があります。そのため、高齢の方は常に嚥下障害に注意する必要があります。
簡単に出来る食事の工夫
筋力の低下した高齢者では、飲み込む時の筋力も落ちている可能性が十分に考えられます。
そのような方には、少し食事を柔らかくして食べていただくことや、一口量を少し少なくして飲み込みやすくするといった工夫が必要です。ここで注意が必要なのは、やわらかい食材でも付着性や粘性が高いと喉に残るということです。わかりやすく言えば、食材がどろどろしていたり、べたべたしすぎると、飲み込んだ後きれいに流れ切らないことがあります。少し残ったものが、飲み込んだ後の息をするときに誤って気管に入ってしまう可能性があります。喉に少し残った感じがあれば、①水分と交互に食事を食べて頂く②咳ばらいを行い、気管に入らないようにする③顎を引き少し前傾姿勢になるように姿勢を工夫する。などがあります。
皆さんは普段使用しているスプーンはどのくらいの大きさでしょうか。病院のスプーンだとやや大きめで、一口で飲める以上の量が乗せられます。一口量が多い方の場合、飲み込める許容量を超えてしまう可能性があり、それが誤嚥につながることもあります。一口量が多いと感じる場合や、飲み込めずにむせ込む方は、スプーンのサイズをを小さくしてみましょう。
ご自分で食べる方の場合、食べるスピードが速くかき込んで食べてしまうと、勢いがありすぎて誤嚥する可能性があるため、小さめのスプーンに変更したり、お皿を小分けにするなどの工夫が良いと思います。
脳梗塞、脳出血などの脳血管疾患では、神経伝達の障害が生じている可能性があり、それが原因で嚥下反射が起こりずらくなっていることがあります。なかなか飲み込めない。ずっともぐもぐしているなどの症状があるときは、2相性の食材に注意をしましょう。麻痺がある場合は、食器の工夫も重要です。
2相性の食材とは
どのような食べ物かというと煮物や、おでんなどの固形物と水分が合わさってできているものをいいます。特に油揚げのように汁を吸いこんでいて、噛んだり飲み込んだりするときに汁がにじみ出るようなものは注意が必要です。こういった食品の場合は、とろみをつけてあんかけ風にするなどの工夫で改善できますので参考にしてください。
食事形態について共通の言語となる嚥下調整食分類という決まりごとがあります。この分類は、施設や老人ホーム、自宅と様々な療養環境の中、嚥下障害について共通認識が出来るように作られました。摂食・嚥下障害の程度、状況を把握し、適切な食事形態を摂っていただくためには、情報共有する必要があります。こういったコードがあることを知り、食事を作る際には、参考にしてください。
食材だけでなく、水分にも3つの分類があり、薄いとろみ、中間のとろみ、濃いとろみと言います。粘度の測定など細かい評価は通常できないため、見た目で判断していただければと思います。また、各製品には、どの分量でこの分類に当てはまるのか説明書きがありますので、ご自宅で作られる際は、説明書きを参考にしていただければと思います。
今は介護用品としてドラックストアーに嚥下調整食品がこのように並んでいることがほとんどです。食事を準備する必要がある場合、まずはこういった食品を試してから、ご自宅で作ってみるのも自信になるのではないかと思います。もしご家族で入院している方がいましたら、退院前に栄養士からの食事指導を受けていただくことも大事です。